「相手軸な話」㊲相手軸に立って最強メンバーを選ぶ・その2

PEOPLE&PLACE(ピープル&プレイス)

2013年03月02日 07:36




「おかしいだろ!こっちは何時間待ってると思ってるんだ!早くしろよ!」

サミットでの新技術展示に参加しているあるメーカーのエンジニアが声を荒げて政府担当者に食ってかかっていました。
数分前、「各国のVIPによる見学時間に変更が生じました。3時間ほど待機して下さい。」と、サミットの展示会担当者からの突然の待機指示が来たのです。その会社のチームメンバーはいらだち、表情はこわばっていました。

一方で、Aさん率いるチームのメンバーは、、、、
「なあんだ時間が空くのか。ならこの時間の間に、他社のブースでも見学に行くか。」
「じゃあ俺は食べ物を調達してくるぜ。」
「私は、足らない工具を調達してくることにしましょう。」
「では、僕は留守番しながら、マシンの調整をしておきますね。」

イライラで爆発寸前の他メーカーチームとは違い、そんな状況など意に介さず、各自の判断で動いていました。
Aさんが編成した強者スペシャリスト4人衆は、むしろこの状況を楽しんでるようにも見えたのです。
なぜ、これほどの差が出てしまうのでしょうか?
もちろん、それはAさんが、こう言う時に一番力を発揮するようにと、知恵を絞って編成したスペシャルパーティだからです。

実は、Aさんが、こんなチームを編成することが出来たのには、悲しい経験があったからなのです。
「日頃もの凄く仕事が出来る部下が、緊急事態の時にまったく役に立たなくなった苦い経験が忘れられないんです。」Aさんは、悲しそうな顔で話して下さいました。

その経験により、彼は「人には状況に合わせた対応能力がある。それは、平時で発揮されることもあるし、緊急時に発揮されることもある。しかし、平時の高い能力が緊急時にも高く発揮出来るとは限らない。だから、人それぞれの特性をよく理解しておかないと、生産性の高いチームを作ることは出来ない。」と考えるようになったのです。

そして、その特性を理解するために、彼は日頃から、部下や同僚の「対応特性」を観察する習慣が付いていました。特に、緊急事態や緊迫した極度のストレス状態の時にどの様な反応や行動を取るか?理不尽なオーダーや矛盾した指示に対して、どの様な対応するか?指示を待つか?自分で考えるか?攻めるか?守るか?色々な対応特性を観察し、リスト化していました。
※彼が具体的にどの様なモデリングをしていたかは、彼の今後の業務に差し支えるため、ここでは具体的には触れないように致します。

タスクフォース(ある特定に任務のために編成されたチーム)が、高い生産性を発揮するには、ミッションの特性と個人の対応特性をマッチングさせないと、ガタガタになります。ロールプレイングゲームでも戦士だけで4人のパーティを組んでも勝てないのと同じですね(笑)

さて、Aさんが編成したチームは、突発的な状況の変化にも柔軟に対応し、無事に展示会を成功させました。
それぞれが、緊迫した環境の中で突発的な変更や展示物のトラブルなどを次々とクリアーし、スムーズに各国首脳による見学は、表面的には何の問題も無かったかのように、終えることが出来たのでした。

緊急のプロジェクトでも、無理難題に直面したときでも、Aさんのように日頃から部下や同僚や先輩達の「緊急時対応特性」を把握することで、最適なチームが編成出来るのですね。私も見習わなければな、と思った次第です。

この話をして下さったAさんに私は「さすがAさん凄いね~」・・・と言ったのですが、よ~く考えてみたら、Aさんの能力を一番的確に把握し、どっしり構えて、ドンッと任せたAさんの上司が、一番凄いのかも知れません。
やはり、上には上がいるものです。そして、こういう上司が入るから、Aさんのような凄い人が育つのかも知れませんね。


「お疲れさん。よくやったな。ありがとう。」
会社に戻ったAさんは、自分に全てを任せてくれた上司からのねぎらいの言葉で、疲れが吹っ飛んだそうです。


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