ある革雑貨職人の小さくて強いこだわり
「あなたの作品を安く買えるのは今のうちだから買うのよ。来年はきっと高くなっているでしょうから。」
ある日、ネットで「手作り革小物」の注文を受けた彼は、注文書に添付されていたコメントを読んで「僕に、こんな事を言ってくれる人がいる。」と、感動で目頭が熱くなると同時に、ますますこだわりを持って、愛情込めて作らなければ、と決意を新たにしたそうです。
彼が、サラリーマンを辞めて、独立したのは一昨年の春。もう2年になります。
その彼と、先日、2年ぶりの再会を果たしました。
ずっと現場サポートとデータ分析を専門に本社勤務をしていた彼でしたので、革小物を作って売っていると聞いて、え?そんな手先が器用だったの?と、チョット信じられない気持ちでした。
しかし、再開した彼はすっかり、「手作り革小物作家」の風体+貫禄がありました。
「儲かるの?」
関西人の私は、いつも、ビジネスになるのかどうかについて、単刀直入に聴きます。
「まだまだ儲かるとまでは行きません。やっとご飯が食べられる状況になった所です。この世界は、競争がかなり激しいので、こだわりと工夫がないと生き残れません。」
職人になっても、相変わらず、鋭い分析力と戦略性は衰えていません。
彼の、こだわりは、細部に渡ります。
彼の作る作品は、小さな携帯ストラップから、手帳、ブックカバー、財布まで、様々です。
彼のノウハウなので、詳しくは書きませんが、ネット上での表現方法、製品そのものの眼を引く特徴、さらに、手縫いへのこだわり、糸の縫い始めと終わりが全く解らないようにする工夫。
極めつけは、縫っている糸のラインにあらかじめ溝を作りその中を縫って行き、糸が本体から出っ張らないようにする。
なので、糸がこすれない、などなど。
ミシンでは絶対に出来ない手縫いの強さと繊細さを感じる作品ばかりです。
そのこだわりは、一度手に入れたお客様が、二度三度と再購入をすると共に、友人に積極的に勧めるという、理想的なファンの広がりが証明しています。
そんな彼も、かつて、大きな悩みの壁にぶつかったことが、あったそうです。
それは、大量注文への対応のための、大量生産・・・
大量生産をしようとすると、彼の今までのこだわりを作品ひとつひとつに込めにくくなってしまう。
それでは、お客様ひとりひとりへの、きめ細やかな対応が出来なくなる。
大きな販売店などからの、大量注文は、非常にありがたいお話しです。
断りたくはない。しかし、機械的な大量生産はしたくはない。
けれど、それでは、「量」に対応は出来ない・・・
大きな悩みでした。
実は、彼の、最大のこだわりは、この「ひとりのお客様に対して、ひとつの作品を作る」と言うことなのです。
いつも、「お使い頂くお客様の顔を思い浮かべて、その人の為だけに作る」
そう言う気持ちを忘れたくない。
そう言う想いを込めて、作っているそうです。
だから、冒頭の様な、お客様からのメッセージを頂けるんですね。
結局、悩み抜いた彼は、若い職人を育成し、彼らと共に、出来る限り対応するという力業で乗り切ることにしたのです。
いずれは、彼の元で修行する若い職人が、彼のこだわりを受け継いだ革製品を、たくさん世に出していくことでしょう。
ビジネスとしての展開は、これからも大きな悩みと戦いながら進めて行かれると思いますが、アイデアと行動力と何よりも、ぶれない、強いこだわりを持った彼ならば、きっと、手縫い、手作りの革製品のビジネスモデルを革新させることでしょう。
そんな訳で、私も、iPhone5用のケースを注文したのでした。
出来上がりが、物凄く楽しみです!
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- author: PEOPLE&PLACE(ピープル&プレイス)
- 2012年09月30日
- 09:05
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