
「何で、そんなことやらないといけないんですか?やりたくありません!」
彼女は、アルバイトを始めて半年。最近めきめきと腕を上げてきて、店長からの信頼も高まってきました。
そんな彼女が、スタッフミーティングで突然反旗を翻したのです。
彼女が、やりたくないって言っていたのは、チラシの配布。それも、帰宅したら近所の家のポストにチラシを入れて廻ると言う事でした。予算が少ないこのお店では、チラシを刷ったものの配付するための人件費が足りません。なので、スタッフのボランティアで自宅周辺に配ってもらおうと店長が提案したのでした。
店長も、同席していたマネジャーもビックリしました。
今まで何でも素直に「ハイッ」と言っていたスタッフの突然の反抗!
店長は、「えええ?何なのこのひと!めんどくさいひとだなあ~。」と感じました。
それ以降、そのスタッフと店長の間はぎくしゃく感がぬぐえませんでした。
一方、スタッフの突然の反抗にいつもとの違いを強く感じたマネジャーは、すぐにそのスタッフと面談を行いました。
その結果、実はそのスタッフは、プライベートで問題を抱え精神的にいっぱいいっぱいの状態だったのです。その為、ちょっとしたことでも余裕が無く、すぐにピリピリした反応をしていたのでした。
店長「まあ、色々事情があるのはわかりましたけれど、あからさまにやりたくないなんて言われてもね~だったらお店を辞めりゃあいいのに・・・」
マネジャー「確かに面倒くさい態度よね・・・でも、ちょっと考えてみて。人間って余裕の無い時って、計算出来なくなるから本音がポロッと出るんじゃ無いかしら・・・」
店長「まあ、そうですね。私もそうかな~」
マネジャー「と言うことは、彼女が言っていることって、本音って事よね。」
店長「はい、そうですね」
マネジャー「と言うことは、他のスタッフも同じように感じているのかも知れないじゃあない。やっぱり、帰宅してから無給でチラシを配るのって嫌なのかも知れない」
店長「う~ん、私は嫌じゃあ無いけどなあ~」
マネジャー「私も店長時代にやっていたから、自分では普通だと思っていたの。でも、みんながそういうわけじゃあ無いかも知れない」
店長「そうか~とすると、彼女はみんなの意見を代弁していることになりますね」
マネジャー「全員の面談をやって、本当はどう思っているか聴いてみない?」
店長「そうですね。わかりました」
店長とマネジャーは、スタッフ全員の面談をしました。
予想通り、彼女の発言をスタッフ達は歓迎していました。スタッフ達も本音ではやりたくなかったのです。
マネジャーは、彼女に「ありがとう。あなたは正直な気持ちを言って、みんなの気持ちを代弁してくれたのね。言いにくいことを言わせてしまって、ごめんね。」と言ったのでした。
彼女は、「私の態度も悪かったと思います。お店が苦しいのはわかっているから何とかしたいんですけれど、でも、私も全然余裕が無くって・・・・。」
マネジャーも店長も反省しました。
結果としては、スタッフの元気さ、やる気さを頼りにし当てにし、サービス残業を強要していたのです。
これは正しいことではありません。
そして、同時にスタッフや部下が,表面的に従順な態度を取っていても、本音とは違うときがある。
と言う大切なことも学びました。
プロコーチが、クライアントにコーチングをしているときでも、クライアントはコーチを喜ばせようと、本音とは違う「良い答え」を言うときがあります。
コーチがそれを真に受けてしまうと、本当の意味での内面的な力やモチベーションを引き出すことが出来なくなります。コーチングがうまく機能しないときは、このようなケースも多いのです。
上司は、部下の「素直なイイ反応」だけに惑わされずに、相手軸に立って、表情や態度や口調の微妙な変化に気づき、そこから本当の気持ちに触れてくように、しっかりと「観て、聴いて、質問する」様にして行きたいですね。
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