「眉間にしわが寄った相手に素直に何でも話せますか？」
出来る店長にそう言われた若き店長は、はじめは自分が人の話を聴いているときにする表情のことを言われているとは気がついていませんでした。しかし・・・
「あなたの表情は、私には『この人は怒っているのかな？』と感じます」
そう言われて、ビックリしたのでした。
若き店長は思わず、
「い、いえ、怒っているなんてそんなことはありません。私は、人の話を聴くときに、ちょっとこう眉間にしわを寄せてしまう癖があるんです。真剣に聴いているんです」
「なるほど。わかります。一生懸命に聴いているんですよね。では、その表情を鏡で見てください。どんな風に感じますか？」
「・・・・た、確かに・・・恐いというか険しい表情です」
「部下やスタッフ達は、あなたのその表情を見て話すのです。あなたが真剣でも相手がどう感じるか、と考えてみませんか？」
「そうですよね・・・この癖、直さなくちゃ・・・でないとスタッフ達は僕に本音で話してはくれませんよね」
若き店長は、自分の険しい表情が真剣さが原因だと思っていても、その表情が相手に与える影響については気にはしていなかったのです。自分勝手な自分軸では、相手軸には立てないということですね。
「もうひとつ、相手の話を聴いているときに書類を見たり、スマホをいじったりすることもね。ちょっと僕がそれをやってみるから、どんな気持ちになるか感じてごらん」
出来る店長は、若き店長の会話をしながらおもむろに自分のスマホをいじり出しました。
先ほど、若き店長が自分のスマホをいじっていたことを遠回しに伝えたのです。
「すみません。さっきは、つい・・・分からなかった言葉をスマホで検索していました・・・それも眉間のしわと同じですね。自分には理由があっても、相手には相手の気持ちに応じた伝わり方をしてしまうですね・・・」
「その通りです。検索が必要ならば、相手にそれを伝えてからすれば良いのです。電話がかかってきても同じです。相手の話を聴いているのですから、主導権は相手にあると考えるべきですよね。ならば、相手の許可を取りましょう。それが、相手を尊重していると言う事です」
「ありがとうございます。これらをきちんと理解して、絶対にやらないように心がけることが、相手が話をしやすい空気を作り、だからこそ自分の話を最後まで聴く気持ちになるんですね」
「わかってきたね。まあでも・・・ここまでやっても、話したいことが頭に浮かんでくるんだけどね」
「そ、そうなんですよね・・・ついつい言いたいことが頭に浮かんできます。聴いていて疑問がわくと、もう話したい気持ちを止めるのが無理・・・」
いくら禁止事項を決めていても
いくら謙虚な心を持つための行動をしても
いくら傲慢な心を封印しても
それでも、相手の話を聴いていて疑問が頭にわくと、話したいことがたくさんわいてくるのです。
ここまで来たら、「質問」をする効果が出てきます。
つまり、「この人は私の話をとことん聴いてくれているな」と相手が思ったら、聴く側がもっと掘り下げて行くために行う「質問」の効果が倍増するのです。
と、普通は、ここで「質問」に話が移るのですが、私はその前にもう一つだけ、ワンクッションを置くことをお薦めしているのです。これは、頭の中でする作業ですのでさほど時間はかかりません。しかし、これをしておくのとしないとではその後の「質問」の質が大きく変わって来るのです。
それは、「想う・・・想像する」です。
明日からは、この「想う・・・想像する」について少しお話をいたしましょう。
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